人物紹介|2026.09.09
エンセン井上の弟子。地元の悪い先輩と過ごしていた日々から、大和魂のオーディションで人生を変えた。公式実況とリング上の言葉から、朝倉未来CEOが「RIZINを目指せる」と評した24歳の現在地を追う。
結論から言えば、Dozerは「格闘技を始めて1年前後で、188cm・121kgの体を武器に2試合を勝った男」である。エンセン井上の弟子で、リングネームは「怪力大和魂」。朝倉未来CEOは「RIZINとかを目指せるポテンシャルある」と評し、自身が立ち上げる新団体への誘いまで口にした。この記事では、公式実況とリングアナウンス、そして本人がリング上とインタビューで語った言葉から、彼の経歴と現在地を整理する。
Dozerが格闘技に来るまでの経緯は、本人がBreakingDown19の公式紹介映像で語っている。地元の悪い先輩たちと一緒にいることが多くなっていた時期に、エンセン井上が大和魂でオーディションを開いていることを知り、「ここは更生するチャンスだと思った」という趣旨の話をしている。男として強くなれることを教えてもらったとも述べていた。
同じ映像では、格闘技を始める前の自分について率直に振り返る場面もある。ストレスがたまって人を殴って解消したいという気持ちがあったこと、因縁のあった相手に自分から喧嘩を売って秒殺し、そこから殴ることが楽しくなったことを、本人の言葉で説明している。MCから「スポーツマンが殺すとか物騒なことは言わない方がいい」とたしなめられる場面もあり、この時点ではまだ競技者としての言葉づかいを身につけていなかったことが分かる。
この経歴の順序が、彼を理解するうえで重要になる。Dozerは競技の世界から出てきた選手ではない。街の側にいた人間が、エンセン井上という受け入れ先を得て競技の側へ移動した。BreakingDownがしばしば作ってきた道筋であり、その中でも成功例に近づいている一人である。
競技出身ではなく、大和魂のオーディションが人生の分岐点になった。本人が「更生するチャンス」と語っている。
DozerのBreakingDown初出場は、2026年3月に名古屋で開催されたBreakingDown19。第13試合、無差別級ベアナックルMMA1分3ラウンドという条件で、相手は「自称最強ホスト」舞杞維沙耶だった。
公式のリングアナウンスによれば、青コーナーのDozerが188cm・118.9kg、赤コーナーの舞杞維沙耶が183cm・95.3kg。体重差は約24kgある。解説陣もこの点に触れ、ベアナックルのMMAルールで20kg以上の差があることの危険性を指摘していた。舞杞維沙耶は2022年11月にBreakingDownデビューした選手で、この試合が10度目の挑戦だと紹介されている。
公式実況はDozerを「ブルドーザーのように前に進む」と表現し、「あのエンセン井上が認める」「格闘技経験は半年」「24歳、人生は明るく可能性は無限」「格闘技素人から人生を変えてみせる」と紹介した。つまりデビュー時点で、格闘技を始めてまだ半年程度だったことになる。
この一戦を本人はどう捉えていたか。紹介映像では「目標は140です」と体重の目標を語り、「これからブレイキングダウンを俺が盛り上げるから」と宣言していた。相手に対しては物騒な言葉も投げていたが、結果としてこのデビュー戦を勝ち上がり、次の大会へ進んでいる。
デビュー戦は体重差約24kgのベアナックルMMA。格闘技歴わずか半年で、この条件をくぐり抜けた。
2026年6月のBreakingDown20で、Dozerはさらに大きな相手と対戦する。公式リングアナウンスによると、青コーナーのなべやんが183cm・126.4kg(福岡)、赤コーナーのDozerが188cm・121.3kg。BD19から体重を2.4kg増やして臨んでいる。サンケイスポーツはこの試合映像を「格闘技歴5カ月のDozer、126キロ戦士を衝撃KO」というタイトルで公開しており、Dozerが勝利した。
この試合でもっとも記憶されたのは、勝った後のリング上のスピーチである。Dozerはマイクを持ち、エンセン井上へ感謝を述べた。「僕は元々不良でどうしようもなかったけど、エンセンさんの弟子になって、こうやって格闘技の道を開くことができました。僕がこうやって格闘技に挑戦できてるのは、エンセンさんのおかげです」という趣旨の言葉である。会場のMCは「Dozer選手、これからです。ヘビー級盛り上がります。PRIDEみたいな時代に盛り上がりますから、皆さん応援してください」と続けた。
エンセン井上のチャンネルが公開した舞台裏映像では、この日のDozerがより素の状態で映っている。仲間が涙していたことに触れ、「めちゃくちゃ仲間がいい人です。仲間のおかげです」と話す場面がある。エンセン井上からもらったTシャツを試合中に伸ばされてしまったというやり取りも収められている。
126kgの相手を倒し、リング上でエンセン井上への感謝を語った。この場面が彼の評価を決定づけた。
BreakingDown20の勝利直後、公式チャンネルの突撃インタビューでDozerは試合内容をこう説明している。初めてあれだけ大きな相手と戦ったので緊張したが、エンセン井上から「自分から前に行け」と言われた言葉が頭に入っていたので体が勝手に動いた、という内容だ。勝因については「1発1発で強く打つっていう練習をしてきた」ことを挙げ、オーバーハンド系の打撃を練習し続けてきた成果だと述べた。
そして最後に、次の目標を明確に口にする。「俺がブレイキングダウンのベルト絶対つけるから、みんな注目お願いします」。次に戦いたい相手についても、名前は伏せながら「ずっとあいつの背中を追いかけてブレイキングダウンに繋がってきたから、今回あいつを狙っていきたい」と指名している。
さらに舞台裏映像では、「これからどうするんですか」と聞かれてこう答えている。「もうMMAでプロになりたいんで、帰ってコツコツまた練習します」。試合当夜の予定を聞かれると「部屋に静かに寝ます」と返し、周囲に笑われる場面もあった。1分間の話題性で終わらせず、競技としてのMMAへ進む意志を本人が語っているという点が、他の話題性の高い出場者と決定的に違うところである。
「MMAでプロになりたい」と本人が明言している。話題性ではなく競技へ向かう意志がある。
この意志は、運営側からも見えている。朝倉未来CEOはBreakingDown21のカード発表の場でDozerを注目選手として挙げ、「RIZINとかを目指せるポテンシャルあると思うけどね。見た目もさることながらポテンシャルもあるので」と評価した。さらに「MMA志向なんだったら俺がやる新団体に出てきてもいいかなと思ってるけれどね。24歳とかだからね。華もあるし」と続けている。
BreakingDown21でのDozerは、第10試合の無差別級キックボクシングに出場する。相手はハルク福沢で、こちらは出場者一覧に記載がなく今回が初出場とみられる選手だ。つまりDozerは、キャリアで初めて「経験のある側」として試合に臨むことになる。
注意しておきたいのは、今回のルールがキックボクシングであることだ。BD19はベアナックルMMA、BD20は無差別級で、いずれも組みや倒した後の攻防が含まれる形式だった。打撃のみのルールでは、彼の体格の優位が単純な形で出る一方、当てられたときの逃げ場も少なくなる。「MMAでプロになりたい」と語る選手が打撃限定のルールでどう戦うかは、それ自体が見どころになる。
なお、本名と出身地は公式に公表されていない。ネット上には推測を記した情報も見られるが、確認できる一次情報がないため、この記事では扱わない。年齢についても、BreakingDown19の公式紹介で「24歳」と述べられたことを根拠としている。
BD21では初めて「経験者側」として戦う。打撃限定のルールでどう見せるかが次の評価を決める。
Dozerの試合を見るとき、体格だけに注目すると本質を外す。188cm・121kgという数字はたしかに目を引くが、BreakingDownには彼より重い選手も出場している。BD20の相手なべやんは126.4kgで、Dozerより5kg重かった。
むしろ見るべきは、彼が「教えられた通りに動けるか」という点である。BD20の勝利について本人は、エンセン井上に言われた「自分から前に行け」という言葉が頭にあって体が動いた、と説明した。格闘技歴1年前後の選手が、緊張した状態で指示通りに前に出られるかどうかは、才能とは別の資質だ。ここが安定していれば、競技へ移ったあとの伸び方も変わる。
もう一つは、本人が語る「目標140kg」との整合である。体重を増やしながら打撃の速度と持久力を保てるのか、それとも階級を意識して調整に入るのか。MMAでプロを目指すなら、どこかで階級の選択という問題に突き当たる。BreakingDown21での体重発表は、その方向性を読む材料になる。
この記事の情報は、公式チャンネルとエンセン井上のチャンネルで一般公開されている映像、公式のリングアナウンス、サンケイスポーツの試合映像、およびゴング格闘技が伝えた朝倉未来CEOのコメントに基づいている。今後の試合で本人が語った内容を追記していく。
体格ではなく「指示通りに動けるか」を見る。目標140kgと階級選択の折り合いが次の課題になる。